ポリリズムを繰り返す3人の女たち

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image@JOIN ALIVE

  音楽というのは人の心を癒したり、気分を高める効果を持っている。私自身、こうしてキーボードで文字を打ち込んでいるこの時間もBGMとして曲をかけていたりする。

 先日、ほんの好奇心で「いつもと違う歌を聞いてみよう」と思い立ち、新たなアーティストと出会うためネットの海に潜った。

 今思えば、このときの軽率な行動こそが、しばらく私を悩ませ続ける苦悩の始まりだった。

 ふと気が付くと、iPhoneの画面の中で「Perfume」という女性3人組で構成されるテクノポップユニットが歌って踊っていた。

 3人の一糸乱れぬキレのある揃った動きは見事なものであり、それこそが彼女らの人気たる所以なのだろうと感心した。

 とはいえ、特にPerfumeに思い入れがあるわけでもなく、この3人の奏でる歌声や曲調が好きなのかと問われればそうでもない。

 大抵の曲はサビの部分を聞いたことがあるぐらいで、「繰り返す~このポリリズム~、あの衝動は~フフフフフフフ」ぐらいしか歌えない。

 しかし、このとき聞いた「ポリリズム」という曲がやけに頭に残った。

 そしてそれからというもの、彼女らは私の脳内に住み着くこととなった。Perfumeとの共同生活の始まりだ。

 自転車をこいでいるときや、大学で講義を受けているとき、気を抜くと彼女ら3人は不意に現れ「繰り返す~このポリリズム~、あの衝動は~フフフフフフフ」の部分だけを歌っては颯爽と去っていく。

 早朝、着替えながら口笛を吹いているとき、気がつけば曲のチョイスはポリリズムになっている。

 終いには曲をダウンロードしてしまっている始末だ。完全に脳を支配されている。これ以上ポリリズムを繰り返さないでくれ。

 そんな願いとは裏腹に、通学中や勉強中、隙あらば彼女らは現れ、ポリリズムを繰り返す。

 これがどれだけ恐ろしいことか想像してみてほしい。

 二十歳の老け顔の男がイヤホンを装着しながら真顔で吊革につかまっている。そっと耳を澄ますと、その耳とイヤホンの間からはポリリズムが聞こえてくるのだ。考えただけで身の毛がよだつ。

 また、大学での講義が始まる前、男が鼻歌を歌っている。「何の歌だろう?」と耳を傾けてみると、男はポリリズムを口ずさんでいるのだ。真夏に放送されるそこらのホラー番組なんかより100倍怖い。

 この彼女らが繰り返すポリリズムのループからいつ解放されるのかは未だにわからない。今、部屋のスピーカーからもポリリズムは繰り返し流れている。

 もう一度言う、お願いだからこれ以上ポリリズムを繰り返さないでくれ。